
目次
40代からのプレ更年期、ピルを続ける?やめる?ホルモン治療の考え方
海外ポッドキャストから学ぶ、米国ホルモン療法の実際
ー40代に入ってから、月経はまだあるのに、以前とは少し違う不調を感じる方が増えてきます。
「眠りが浅くなった」
「急に汗をかくことがある」
「気分の波が大きくなった」
「肌や髪の変化が気になる」
「生理前だけでなく、月の中で体調が読みにくくなった」
「疲れが抜けにくくなった」
このような変化があっても、完全に閉経したわけではありません。
そのため、自分では「更年期」と言ってよいのか分からず、婦人科に相談するほどではないと感じている方も少なくありません。
しかし、40代の不調は「年齢のせい」「忙しいから仕方ない」と片づけられがちですが、月経、睡眠、気分、肌、髪、疲れやすさの変化は、ホルモンの揺らぎと関係していることがあります。
まだ閉経していないから相談するほどではない。
まだ我慢できるから治療はいらない。
そう思っている時期こそ、実は女性医療ではとても大切な“移行期”です。
更年期前後の女性の診療では、
「ピルをいつまで続けてよいのか」
「更年期症状が出てきたら何に切り替えるべきか」
「エストロゲンは本当に危ないのか」
「まだ妊娠の可能性がある時期に、どう治療を選べばよいのか」
といった問いに向き合うことになります。
最近、海外の女性医療ポッドキャストを聴いていて印象的だったのは、米国では避妊と更年期治療を、別々のテーマではなく、連続したひとつの流れとして捉えていることでした。
低用量ピルと更年期ホルモン療法の「あいだ」をどう考えるか
日本ではしばしば、「低用量ピル」と「更年期ホルモン療法」は別の話として語られます。
しかし実際の診療では、その二つの“あいだ”をどう橋渡しするかがとても重要です。
特に40代以降では、避妊の必要性がまだ残っている一方で、ほてり、寝汗、睡眠の乱れ、気分の揺らぎ、集中力の低下、皮膚や毛髪の変化など、ホルモンの揺らぎに関連する症状が現れてくることがあります。
この時期には、少なくとも3つの境界線があります。
1つ目は、月経トラブルと更年期症状の境界線です。
月経痛、過多月経、PMSが中心なのか。
それとも、ほてり、寝汗、睡眠障害、気分の揺らぎ、肌や髪の変化が目立ってきているのか。
同じ40代でも、困っている症状によって治療の方向性は変わります。
2つ目は、避妊が必要な時期と、更年期治療を考える時期の境界線です。
40代では妊娠の可能性がゼロではない一方で、エストロゲン低下に伴う症状も出始めます。
そのため、「避妊」と「更年期症状のケア」を別々に考えるのではなく、同時に整理する必要があります。
3つ目は、ピルを続けるべきか、別のホルモン治療へ移行するべきかの境界線です。
一般的には、閉経後には低用量ピルの使用は必要なくなり、必要に応じて、よりマイルドな更年期ホルモン療法へ移行していきます。
ただし、そのタイミングは全員同じではありません。
年齢、月経の有無、症状の程度、喫煙、片頭痛、血栓症リスク、その他の持病などを確認しながら、現在の治療を続けるべきか、変更すべきかを判断していきます。
つまり、この時期の治療は「ピルを続けるか、やめるか」という単純な二択ではありません。
低用量ピルを続けるのか。
プロゲスチン単独ピルを考えるのか。
更年期ホルモン療法へ移行するのか。
あるいは、まず生活習慣や症状の整理から始めるのか。
その判断は、単に年齢だけで決めるものではありません。
避妊の必要性、症状の程度、将来の健康リスク、そして日々の生活の質を見ながら、一人ひとりに合わせて考える必要があります。
プレ更年期は、我慢する時期ではなく整える時期です
米国産科婦人科学会であるACOGも、閉経周辺期から閉経後にかけてのホルモン治療について、患者向け・医療者向けの両面から情報を提供しています。
海外の女性医療では、避妊、月経トラブル、更年期症状、更年期ホルモン療法を、年齢ごとに分断された別々のテーマではなく、女性のライフステージに沿った連続した医療として捉える考え方があります。
プレ更年期は、我慢して通り過ぎる時期ではありません。
これからの自分の身体を整え直す、大切な準備期間です。
当院では、40代から50代前半の時期を、単なる「更年期の前段階」ではなく、これからの10年、20年の体調を整えるための大切な設計期間として考えています。
月経、避妊、更年期症状、肌や髪の変化を別々に考えるのではなく、女性のライフステージ全体として診療していきたいと考えています。
今回の記事では、こうした海外の女性医療の考え方も参考にしながら、40代以降の女性にとって、低用量ピル、プロゲスチン単独ピル、更年期ホルモン療法をどのように考えていくかを整理してみたいと思います。
低用量ピルとは
低用量ピルとは、エストロゲンとプロゲスチンという2種類の女性ホルモンを含む薬です。
一般的には「避妊のための薬」というイメージが強いかもしれませんが、実際には避妊だけでなく、月経痛、過多月経、PMS、月経不順などの改善を目的として使われることも多くあります。
低用量ピルは、排卵を抑え、子宮内膜が厚くなりすぎるのを防ぐことで、月経量や月経痛を軽くする作用があります。
そのため、若い世代から40代まで、月経に伴うつらい症状を整える治療として広く使われています。
一方で、低用量ピルにはエストロゲンが含まれているため、年齢、喫煙、片頭痛、血栓症リスクなどによっては、慎重に使用を考える必要があります。
特に40代以降では、これまで低用量ピルを問題なく使えていた方でも、今後も同じ治療を続けるのがよいのか、別の選択肢へ移行するべきかを考える時期に入ってきます。
そこで近年、注目されている選択肢のひとつが、POPと呼ばれるプロゲスチン単独ピルです。
POPとは何か
まず整理しておきたいのが、経口ホルモン製剤の考え方です。ひとつはエストロゲンと黄体ホルモン(プロゲスチン)を含む配合薬、もうひとつはPOP(progestin-only pill)、すなわちプロゲスチン単独ピル(ミニピル)です。
POPはエストロゲンを含まないため、エストロゲン含有製剤が使いにくい方にとって選択肢となることがあります。海外では、避妊のために必ずしもエストロゲンが必要とは考えず、症状や背景に応じてPOPへ切り替える発想が比較的自然に取り入れられています。
日本でもようやく昨年、2025年にプロゲスチン単独ピル(ミニピル)である避妊目的のスリンダ錠が発売されました。(詳細は別コラムに記載しております)
黄体ホルモンは「第何世代か」も実は大切
海外の議論で興味深いのは、プロゲスチンを単に「黄体ホルモン」としてひとまとめにせず、第1世代、第2世代、第3世代、第4世代という違いを実地診療に生かしている点です。にきび、多毛、むくみ、体感の差などを考えるうえで、この違いは決して小さくありません。
とくに第4世代に位置づけられるドロスピレノンは、アンドロゲンの影響を抑える方向に働くことから、にきびや多毛が気になる方にとって相性のよい選択肢となることがあります。ドロスピレノンは月経困難症治療薬、ヤーズ配合錠やドロエチ錠に使用されている成分です。
エストロゲンは「悪者」ではない
エストロゲンを含む製剤については、しばしば「血栓が怖い」「年齢が上がったら危ない」といった印象だけが先行しがちです。もちろん、これは軽視すべきことではありません。エストロゲン含有製剤では、年齢、喫煙、肥満、既往歴、片頭痛などを踏まえた丁寧なリスク評価が欠かせません。
しかしその一方で、エストロゲンは女性の身体にとって本来きわめて重要なホルモンです。更年期医療でエストロゲンが語られるのは、単にほてりや寝汗のためだけではありません。エストロゲンは、少なくとも次のような組織に広く関わっています。
- 骨
- 皮膚
- 毛髪
- 爪
したがって、エストロゲンを一律に「悪いもの」と捉えるのではなく、利益とリスクの両方を見ながら適切に用いることが大切です。
血栓リスクは「使う・使わない」だけでは語れない
近年のホルモン治療の考え方では、エストロゲンを「使うか、使わないか」の二択で考えるのではなく、どの患者さんに、どの経路で用いるかが重視されています。背景リスクを評価したうえで、内服だけでなく貼付剤などを選ぶという発想も、現代的なホルモン治療の一部です。
E4(エステトロール)という新しい視点
E4(エステトロール)は、体内でつくられる天然型エストロゲンの一種です。従来の合成エストロゲンに比べて肝臓や血液凝固への影響が少ないとされ、より穏やかにホルモンバランスを整えることが期待されています。一方、避妊目的の低用量ピル、従来の月経困難症治療薬のピルに使用される女性ホルモンは全て合成の女性ホルモン製剤です。
今回、海外の議論でとりわけ興味深かったのが、E4です。米国では、エステトロールとドロスピレノンを組み合わせた製剤が避妊薬として用いられています。
そして日本の視点から非常に興味深いのは、同じE4を含む製剤が、日本では、2025年に発売となった「アリッサ配合錠」として月経困難症治療薬に位置づけられていることです。つまり、同じ成分系でありながら、米国では避妊薬、日本では月経困難症治療薬としての位置づけが前面に出ているわけです。
この違いは、医薬品の価値が成分だけではなく、承認制度や医療文化、臨床現場での使われ方によっても変わることを示しています。海外の知見をそのまま輸入するのではなく、日本の制度や患者背景に照らして読み解く必要がある、という点でも示唆に富んでいます。
コラムを投稿しております、本日(2026年4月24日)受講しました医療WEBセミナーでは、愛知医科大学名誉教授の若槻明彦先生が、進化するHRT(ホルモン補充療法)のタイトル講演の中でE4製剤が今後の更年期世代のホルモン補充療法において安全に使用できるのではと言う興味深いお話を伺いました。
40代の不調は、「年齢のせいだから仕方ない」と片づけられがちです。
プレ更年期世代である40代、実際には、月経、睡眠、気分、肌、髪、体型、疲れやすさなど、いくつもの変化がホルモンの揺らぎと関係していることがあります。
まだ閉経していないから更年期ではない。
まだ我慢できるから治療はいらない。
そう考えて受診を先延ばしにしてしまう方も少なくありません。
けれども、プレ更年期は“我慢の時期”ではなく、これからの自分の身体を整え直す時期です。
ピルを続けるのか、ミニピルを考えるのか、更年期ホルモン療法へ移行するのか。
その答えは一人ひとり違います。
当院では、月経・避妊・更年期症状・肌や髪の変化を別々に考えるのではなく、女性のライフステージ全体として診療していきたいと考えています。
更年期世代の診療で大切にしたいこと
更年期世代の診療において大切なのは、「ピルを続けるか、やめるか」「エストロゲンが良いか、悪いか」といった単純な二分法ではありません。
実際には、
- まだ避妊が必要か
- 血栓症リスクはどうか
- 喫煙や片頭痛などの背景因子はあるか
- にきびや多毛などアンドロゲン関連症状はあるか
- ほてり、寝汗、気分、肌、毛髪の変化をどの程度つらく感じているか
こうした点を丁寧に見極めながら、POP、配合薬、更年期ホルモン療法を連続した選択肢として設計することが重要です。
おわりに
海外のポッドキャストから改めて感じたのは、ホルモン治療は「何が絶対に正しいか」を競うものではなく、その方の年代、症状、価値観、リスクに応じて、いかに上手に組み立てるかが本質だということです。
エストロゲンを必要以上に恐れず、しかし慎重なリスク評価は怠らない。そしてPOPやE4製剤のような選択肢も視野に入れながら、避妊、月経困難症、更年期症状をつなげて考えていく――その柔軟な視点こそ、これからの女性医療に求められるものではないかと感じます。
※本コラムは、海外の医療情報・学会情報を参考に、日本の承認制度・診療実態を踏まえて記載した記事です。実際の治療選択は、年齢、既往歴、喫煙歴、血栓症リスク、症状の内容などを考慮して個別に判断されます。
参考ポッドキャスト(2026年4月18日配信)
ヘザー・ハーシュ(Heather Hirsch, MD, MS, MSCP)博士は、更年期障害、女性医学を専門とするアメリカの医師。
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